市川雛菜は迷わない ~【♡LOG】市川雛菜コミュ感想~

 

 し-あわせ〔-あわせ〕【幸せ/仕合(わ)せ/倖せ】

1.運がよいこと。また、そのさま。幸福。幸運。

2.その人にとって望ましいこと。不満がないこと。

3.めぐり合わせ。運命。

4.運がよくなること。うまい具合にいくこと。

5.物事のやり方。また、事の次第。

ーgoo辞書よりー

 市川雛菜というキャラクターにおいて、一番のキーワードといえば「しあわせ」である。自分が「しあわせ」だと判断するものに従って生きる。そんな少女だ。その自由奔放なようで、芯の通った生き方が好きで、シャニマスにおいて担当に一番近い位置にいる。しかし、同時に怖くもあった。あまりにも強固なその判断基準のバックボーンが見えなかったからだ。浅倉透のジャングルジムの想い出のような存在があれば、まだ彼女の得体の知れなさも払拭できただろうに、と思ったものだ。故に、新しいSSRのコミュでその辺りの何かが見えれば、と思っていた。

結論から言えば、自分は杞憂を抱いていただけであり、市川雛菜という女の子に、彼女が出す魅力に、集中していれば良かったのだ。雛菜も言っていたじゃないか、自分に集中してくれって。

以下、コミュの感想と結論。

〇CAM:P

雛菜が事務所の部屋を案内するライブ配信をするコミュ。カメラマンがプロデューサーということでcam(カメラの略語。配信するという意味もある)とP(プロデューサー)をコロン(:)で接続している。

寄せられるコメントを読んでいきながら、配信自体は無事終わる。その中に「雛菜の部屋も見たい」というコメントもあり、プロデューサーは次回配信の案として出す。しかし、雛菜は意図的にそのコメントは無視し、読み上げてもいなかった。

お願いされたからって何でもやらない。自分ができることで、”やりたいことだけ”。

そういう雛菜にリクエストに応えたいというプロデューサー。雛菜はこう返す。

”言いたいことが言えて、やりたいことができるのとおんなじぐらい、言いたくないことを言わなくてよくて、やりたくないことをやらなくていいのも、大事でしょ?

このセリフを見た時、雛菜に感じていた得体の知れなさが見えてきた。自分は彼女の目指す場所がわからなかった。個性が掴めなかった。違ったのだ。彼女に個性はない。あるのは基準だったのだ。最初からずっと提示されていた「しあわせ」という絶対基準が。それでも、アイドルという期待に応え、それが美徳とされている仕事で、「期待に応えること」と「期待に応えないこと」をここまで同列にできるのが信じられなくて、目を逸らしていたのだ。

しかし、個性を超える基準によって生きる人間、それは機械じゃないのか?

雛菜は流れる数多くのコメントから、当たり前のように「そうでないもの」を選別して、切り捨てている。プロデューサーにそれを凄いことだと指摘さて、初めて気づくくらいに。

タイトルのコロンは強調の意味を持つ。カメラという機材を持つのは確かにプロデューサーだ。しかし、”機械である”のは、果たしてそれだけなのだろうか…?

ちなみに、cameraの語源はラテン語の「部屋」という意味の単語である。

〇O/R

同日にバッティングした2つの仕事を、雛菜に選ばせたら即決したというコミュ。どちらの仕事にも可能性を感じるプロデューサーが悩んだ末に雛菜の意見を求めた、という流れ。余りの決断の速さに驚くプロデューサーに、雛菜は

”いっぱい時間をかければ、ちゃんと考えたことになるの?”

と返す。確かに時間をかえて考えればいいというものでもない。しかし、二つの同質のモノを提示された時に即決できるのは、”事前に答えが決まっている時”か”自分の中で絶対的な基準があるか”のどちらかの時だ。

”ちゃんと考えて選んだから、明日になったとしても、雛菜は変わらないよ。雛菜がすっごくしあわせ~って思える方を選ぶんだもん。……そんなの、すぐにわかるよ”

このセリフから、彼女はずっとこういう選択を繰り返してきたことがわかる。他者からすれば、考えていないと思われるほどに高速化できるまで。コンピュータが最適化され、高速化するように。

タイトルのO/Rは英単語の”or”からだろうが、コンピュータ用語にO/Rマッピングというのがある。雑に言うとデータベースを現実に即して概念化(オブジェクト化)する際の橋渡しをするもののことである(間違ってたら申し訳ない)。つまり、プロデューサーから見たら二つの仕事はデータベース化され、それぞれの魅力が表のように並列に並べられているが、雛菜か見たら二つの仕事はオブジェクト化、つまり「しあわせ」という基準に概念化されたのだ。その齟齬を埋め合わせるコミュだから、わざわざOとRの間にスラッシュを入れたのである。

〇CuddleToy

和訳すると、玩具を(愛情をもって)抱きしめる。このSSRで最重要のコミュ。

ユアクマというキャラクターのカフェの仕事の方をを受けることにした雛菜のコミュ。

”雛菜がすきだな~って思うものを、すきだな~って言うのがお仕事で、それってすごい幸せだよね~”

これまで人間というより機械じゃないか?と思わせてきた市川雛菜の「魅力」がここにある。彼女の判断基準は機械のような揺るがなさでも、それが出す結果は、確かに人をしあわせ~にするものなのだ。そして、彼女はその結果を出すのに迷いがない。自分が好きで、可愛いと思うものをそう訴えるのに迷いがない。自身があるとかないじゃなく、迷いがないのだ。それは、アイドルの適正としては最上のものなのではないだろうか?

ユアクマちゃんは最初は余り受け入れられなかったキャラクターで、コラボカフェも他のキャラクターに遅れて初めてらしい。プロデューサーに雛菜に似ているというが、本当にそうである。

”こうやって見ると、かわいいもんな”

というプロデューサーの言葉は果たしてユアクマちゃんに向けられたものか、それとも。

〇RedBomb!

選ばなかったもう一つの仕事がお料理系であることがわかるコミュ。タイトルの赤い爆弾とは、雛菜が電子レンジで誤って爆発させたミニトマトのことである。

プロデューサーが頑張ってお料理系のお仕事もできることになったのだが、雛菜はその仕事も即決する。もちろん雛菜は「しあわせ」な方を選んだだけである。雛菜は以前の配信で取り上げはしなかったものの、料理をしているところを見たいというコメントを覚えていて、それを叶えばしあわせだよねと言ってくれた。雛菜は、その時は絶対的な基準によって選別したコメントも、それは消去しているわけではなく、彼女の判断基準に叶えば、どんな小さなこともピックアップしてくれるのだ。それは、アイドルの適正として得難いものだろう。

〇project;or

TureEndのコミュ。事務所のソファにユアクマちゃんグッズを並べる雛菜。視聴者の要望を受けて、今回の配信はユアクマちゃんグッズの紹介だという。

"雛菜が楽しくしあわせにやったことを見て、ほんとにちゃんと誰かが楽しくなったりしてるみたいだから、すごいよね”

タイトルのセミコロンは、接続の意味で使用される。市川雛菜のor(選択、あるいはプログラミング言語でいうOR演算子)の結果は、こうして投影(project)されているのだ。彼女が自分の選択をし続けても、彼女が「しあわせ」と思ったことを伝えるのに迷いがない限り、それは素敵な結果として出力されるだろう。それが、市川雛菜の魅力なのだ。そこにAでもBでもいい、値の入力してあげるのが、プロデューサーの仕事なのかもしれない。

〇市川雛菜は迷わない

迷いがないというというのは、真っすぐなことではない。迷った末に通過する道こそが最短でも、迷いがなければ、その分岐点の前に自分が信じた遠回りの道を進んでしまうのだ。

”雛菜の「楽しい」って「楽をする」という意味じゃないだろ?”

共通コミュ「take the cake!」より。雛菜さえ気づいてなかったこの事実が、全てなのかもしれない。自由奔放、協調性がない。そうかもしれない。あまりにも掴みどころがない。私がそう思っていたように、そう思われるのかもしれない。

しかし、彼女はいつでも選択し続けている。迷わず、明るく。その結果、彼女が映し出したものを見れば、彼女が好きになれることだろう。

彼女は、wingに優勝すると、こう言ってくれる。

”……ちょっとぐらいなら、大変なこと、あってもいいよ”

迷いがない彼女の「大変なこと」、やっとわかった気がするのだ。それは彼女の選択の障害や対立になることではなく、彼女の選択の中で、変数Xになることなのだ。市川雛菜一人ではできなかったこと、選べなかったこと。それを叶えてあげる変数。ここまで来ると、プロデューサーとアイドルとの関係性としては普遍的なものになる。

 

さて、最後にもう一度言おう。市川雛菜は、迷わない。何処かを彷徨っている迷いは、プロデューサーが引き受ければいい。